【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は7月10日に刊行された『死なない少女の屍体は、ここに。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
不死の力を持つ騎士団長テッサが、なぜ死んだのか。まず、その謎に引き込まれた。だが読み進めるほど、これは少女たちの友情と愛情を描いた物語なのだと思い知った。
新人騎士レミナが亡き団長の死の真相を追う過程は、まるで故人の足跡をたどる旅のようだ。仲間たちの証言からテッサの偉大さを知る度に「これほど大きな存在が失われたのか…」と、私まで切なさを覚えた。とはいえ、レミナの明るさと懐っこさには救われる場面も多く、ほのかな百合の香りを感じられる描写にはたっぷりと癒やしてもらえた。ありがとう、レミナ。
前任者が完璧すぎる人物だった場合、後を託される者というのは余計にプレッシャーを感じるものだろう。それでも組織というのは、誰かが先頭に立って回していかないといけない。そのような状況に置かれても、前を向いている女性騎士たちからは、私も大いに勇気をもらえた。強くてカッコいいヒロイン……なんと気高く美しいのだろう。

だが本作を通して一番感じたことは、本当に強い人間ほど、誰にも見せない何かを背負っているのかもしれないということだ。危険から守るためにあえて部下を突き放したり、それでもめげず上司に踏み込んだり……彼女たちを見ていると、月並みな表現だが「他者を思いやる心」や「支えあうことの大切さ」について深く考えさせられた。
謎が少しずつ解き明かされるたびに、テッサの死という喪失感が温かい感情で埋められていった。最期まで仲間を想い続けたテッサ。『界律騎士団に律の樹の加護があらんことを』――彼女の日記に記されたこの一節の重みを、読了後もずっと噛みしめている。
文:赤川 恵
ざっくり言うとこんな作品
・本作で語られる不死身殺しの謎。
本作最大の謎である「騎士団長テッサの死」については真相を読んで欲しいポイントです。殺害方法はもちろんですが、いったい誰が、そして彼女はなぜ死ななければいけなかったのか。その真実にたどり着くとき、知られざる想いが明かされます…!
・イラストレーター・切符さんが描く個性豊かな登場人物たち。
登場人物たちは「誰か」が「誰か」を想って行動しています。
特に騎士団長のテッサは作中で故人ですが、この物語を読んだ方は、彼女の死を惜しいと思っていただけるような魅力的なキャラクターです。どのキャラクターたちも可愛さ、聡明さ、一途さなどそれぞれの魅力を持っています。
・この作品でしか味わうことができないファンタジーな世界観。
国の中心にそびえる大樹《律の樹》――それをドラゴンなどの外敵から護る《界律騎士団》の存在。魔法のような特殊能力を持つ騎士たちが織りなすファンタジーな世界観も魅力のひとつです。
主要キャラ紹介

テッサ
界律騎士団団長。不死身の異能力を持ち、沈着冷静で高潔な指揮官。不死身であるはずの彼女が謎の死に見舞われることになる。

レミナ
前向きで明るく、カリルを慕う元気娘。補欠合格だが情熱は人一倍。レミナも関係した過去の事件でテッサに恩があり、新米騎士としてテッサの死の真相を追うことになる。

カリル
将来の副団長候補。誰もが認める実力者。レミナとは幼なじみで、交友があるだけではなく過去の事件にも関わっており「もう一人の幼馴染」とも面識があり――。

タミイ
副団長。銀髪碧眼の美貌の持ち主。口調は辛辣だが根はいい人。カリルの教育係で、彼女のことを好意的に想っている。
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- 赤川 恵
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死なない少女の屍体は、ここに。界律騎士団に入団したその日、新米騎士・レミナは不死身と謳われた団長・テッサの死体を目にしていた。騎士団の象徴であり、多くの命を救ってきた英雄でもある彼女が死ぬなど、誰も想像すらしていなかった。
犯人も不明、殺害手段も特定されていない。騎士団に動揺が広がる中、ただ静かに横たわる死体だけが、ありえない現実を語っていた。
不死を殺すことは本当にできるのか?
なぜ、彼女は死ななければならなかったのか?
レミナは胸に渦巻く哀しみと疑念を抱え、数年ぶりに再会した幼馴染・カリルら仲間達と共に、テッサの死の真相と遺された想いを追いかける!発売日: 2025/07/10電撃文庫