【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は7月10日に刊行された『ゲーム・ウィズ・スローン 無限死行』です。みなさんの感想も聞かせてください!
VRゲームの没入感って本当にすごい。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着すると目の前に現れる仮想の世界に自分が入り込んでいる気になれる。『ダーケスト・レルム(DR)』というVRゲームはフィクションだけど、進行性の神経障害で体がどんどん動かなくなるミギリでも、ゲーム世界でなら得意な殺陣をいかして大活躍できるというから、いつか実現されて欲しいテクノロジーだ。
そんな『DR』のサービスがハッキングを受けて停止してしまうかもしれないと聞いたミギリが、絶対にサービスを再開させるんだと危険なゲームに飛び込んでいったのだから、これは応援するしかない。ハッキング前と違って痛みが感じられるようになったゲームに挑むのは恐怖しかないけれど、ゲームだけが自由に生きられる場所なら自分だって同じことをする。生きるために戦う必要があるなら戦うのだ。そんな気持ちをくれる物語だ。
1回でも間違えたら死あるのみのミッションクリアを目指し、一瞬の間に何万回もシミュレーションできる能力を使って自分を鍛え上げる仕掛けに感心。ゲーム内に現れたNPC(ノンプレイヤーキャラクター)とコミュニケーションをとる時にも使われた方法で、その挙げ句にとてつもない存在だったことが分かるところには、『セピア×セパレート 復活停止』のようなSF的な驚きがある。コンピュータに関する描写からは、『なれる!SE』の作者ならでは豊富な知識を感じ取れる。最後の最後に繰り出される感動しかないシチュエーションに至るまで、味わいどころ満載の1冊だ。
文:タニグチリウイチ
ざっくり言うとこんな作品
・『ガーリー・エアフォース』『セピア×セパレート 復活停止』著者の最新作!
・主人公はウィルス感染したVR“死にゲー”のノーミス攻略に挑む!?
・地下六十層で主人公を窮地から救った謎の少女。彼女の目的とは?
主要キャラ紹介

ミギリ
殺陣が得意な俳優として活躍していたが神経障害で体を動かせなくなってしまった男性。VRゲームの中だけは自由に動けるため、サービスが止まったゲームの復旧に乗り出す。

スゥ
ミギリが潜ったVRゲームの60階層で出会った謎の少女で、ヒュドラを倒して冒険を続けるミギリにくっついてくる。パーティーメンバーには召喚獣のような存在だと説明する。

ノイチゴ
ミギリと同様にゲームの復旧ミッションに参加していた少女。はじめのうちは大人しそうにしていたが、すぐにミギリをトロルの囮として差し出して逃げる狡猾さを見せる。

眠りアザラシ
VRゲームの案内人として現れたスーツ姿の美女で、顔の上半分をアザラシのようなマスクで覆っている。ミギリたちには情報を与える代わりに稼いだ報酬の半分を要求する。
- タニグチリウイチ
- ラブコメ
- 読書感想文レビュー
関連書籍
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ゲーム・ウィズ・スローン 無限死行外部からの不正アクセスによってサービスが停止された、人気VRSLO『ダーケスト・レルム』。その熱狂的プレイヤーの一人だった椋野ミギリは“眠りアザラシ”を名乗る人物から、ウィルス解析(フォレンジック)用ルートを使用した裏口接続(バックドアアクセス)のオファーを受ける。
ゲーム内に残された暗号通貨で一儲けしようと集まったかつてのプレイヤーたち。ところがログインした彼らを待っていたのは、ウィルス感染によって逃げ場のない地獄と化したデスゲームの世界だった……。その最深部・地下六十層で窮地に陥ったミギリは、しかし思いも寄らない出会いから数奇な運命に巻き込まれていく。絶望の淵からミギリを救った“彼女”の目的とは? そして謎多きサービス停止の真相とは――?発売日: 2025/07/10電撃文庫