電撃文庫の人気シリーズ、「青春ブタ野郎」シリーズは2014年に刊行が開始され、2018年にはTVアニメが放送、2019年と2023年には3作の劇場アニメが公開されました。
「思春期症候群」と呼ばれる超常現象に悩まされる少年少女たちの物語は、2024年4月時点で累計発行計部数が300万部を突破し、2024年10月に完結となりました。
しかし、この夏には7年ぶりのTVアニメシリーズの放送が始まり、7月10日には短編集の発売と、「青ブタ」旋風は止まりません。
そこで今回は著者・鴨志田 一先生に、改めて作品の完結や大学生編のアニメ化などへの思いを伺いました。
『青ブタ』という作品が本当の意味で完結した印象はまったくありません
──『青春ブタ野郎』シリーズの完結、おめでとうございます。まず、『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』にて本編完結を迎えたことについて、鴨志田先生の率直な心境をお聞きしたいです。
ひとつの物語を完結まで描き切れたことに対しては、ほっとする気持ちはあったかと思います。ただ、原稿を書き上げた当時から、大学生編のアニメ化(『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』)の話は進められていたので、「青ブタ」という作品が本当の意味で完結した印象はまったくなく、今この瞬間も現在進行形で脳内の大きな部分を占めている状態が続いています。
──今触れられた大学生編について触れる前に、高校生編のお話から伺えればと思います。高校生編では特に各巻で一人ずつヒロインが持つ悩みを掘り下げられていた印象がありますが、鴨志田先生がその中でも特に印象に残っているエピソードはどれですか?
全ヒロインをメインヒロインとして描く、という想定ではじめたタイトルなので、どの巻もどのエピソードも強く印象には残っています。あえて、ひとつ挙げると、作品として最初のターニングポイントになった『青春ブタ野郎はロジカルウィッチの夢を見ない』でしょうか。恋愛の要素もありながら、友情の比重が高い物語になっており、読者の皆さんにどう受け取られるか未知数だったのですが、深夜に佑真が自転車で駆け付けるシーンや、その後、砂浜で花火をするシーンなどは、かなり好意的に受け止めていただけていて、こういう物語もアリなんだなと気づいた巻でした。
──企画段階で考えていた設定から、実際に執筆する中で大きく変化していったキャラクターもいるのでしょうか?
大枠ではどのキャラクターも想定内だったかと思います。麻衣さんの人気の高さが想像以上だったというのはありますが。
──大学生編について伺います。以前のインタビューにて、「翔子さんの謎がすべて解き明かされるまでシリーズを続けることが目標だった」と語られていましたが、その後のエピソードとなる大学生編はどのように物語を組み立てられていきましたか?
大学生編をやると決めた上で大事にしたのは、地続きの物語であることでした。まったく別のルール、感情でお話を積み上げるのではなく、高校生編の出来事があるから成立する物語とでも言えばいいでしょうか。この言葉の意味は、大学生編を最後まで読んでくれた読者の方にはわかってもらえるんじゃないでしょうか。アニメで追いかけていただいている視聴者の方も、そのときが来たら、そういうことかと思ってもらえたら、意図や狙いの表現が上手くいったと思っていいのかもしれませんね。

──大学生編はアニメ化後に執筆されたエピソードですが、何か増井監督・横谷さん(構成・脚本)をはじめ、アニメスタッフとのやりとりや映像化したことで考えがクリアになり、生まれた描写はあったのでしょうか?
具体的な表現は避けますが、霧島透子のイメージに関しては、アニメ化を通して勝手にヒントをもらいました。
「ビーチクイーン」に関してはポップに楽しく読める小説を目指しました。
──さて、今回刊行される『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない+』は、テレビアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』のBlu-ray封入特典や、映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』の来場者特典として執筆されたエピソードに加え、書き下ろし短編が収録された一冊です。その表題となっている「青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない」では、ビーチバレー選手の新ヒロインが登場し、咲太を新たな謎へと誘います。このエピソードを描く上で、鴨志田先生が特に意識されたことはなんですか?
原作にしろ、アニメにしろ、題材にシリアス成分が多いため、「ビーチクイーン」に関してはポップに楽しく読める小説を目指しました。ネタは、「青ブタ」の企画を立てたときに出していたアイディアのひとつだったんですが、本編には入れにくい内容だったためこちらでの採用となりました。
──映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』の特典として描かれた「青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る」では、高校生編でも衝撃的な印象を与えたあの場所・あの場面が再び登場します。こちらはどのように生まれたエピソードだったのでしょうか。
皆さんが見たいところかな、と思ったのが一番の理由でしょうか。
──書き下ろしエピソードの「青春ブタ野郎はトロピカルサマーの夢を見ない」は?
どうすれば、麻衣さんが水着を着る環境を整えられるか、ですね。
──ファン待望のエピソードだったのは、そういった理由からだったのですね……! そんな短編集と同時に、大学生編のテレビアニメも放送・配信が開始となります。楽しみにしている原作ファンに向けて、原作者ならではの目線から特に注目してほしい推しポイントをお教えください。
映像で、音楽で、音声で、そして、物語で、「青ブタ」の世界が贅沢に繰り広げられます。劇中歌の霧島透子の楽曲もあります。当然、大学生編のヒロインズからも目を離せません。成長した咲太や麻衣さんたちの姿も楽しんでほしいですね。生きている青ブタ世界をご堪能ください。
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青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない+その日は峰ヶ原高校の体育祭。咲太はいつも通り、かえでに起こされ学校に向かう。理央や佑真と同じ青組で応援を決め込むも、憂鬱な相談が舞い込んで……。
「玉入れのメンバーに欠員が出たから、咲太が出てくれ」
任されたのは、急に姿を消した同級生にしてビーチバレーのジュニア選手でもある大津美凪の代役。朋絵と玉入れをしたり、のどかと借り物競争に出たりして、ようやく訪れた麻衣とのお弁当タイム。
ところが、その途中立ち寄ったあるところで美凪の姿を発見し――!?
書き下ろし『トロピカルサマー』も収録する『青ブタ』初の短編集をお届け!
発売日: 2025/07/10電撃文庫