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後宮を舞台に見習い仙女が大活躍! 爽やかな読後感が心地良い一作です

富士見L文庫
富士見L文庫
2025/07/15

【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回は7月15日発売の 『仙華繚乱 女仙、転じて医官となる』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 王のための美しい女性が集められ、寵愛を競い合う場所・後宮。さまざまな身分の女性が暮らす閉ざされた後宮は、どこか日本の学校に通じる要素を感じます。性格や持ち味が異なる生徒たちが友情を育んだり、ときにはケンカをしたり恋をするように、後宮でもさまざまな人間模様が繰り広げられていくのです。

 物語の中心にいるのは、人の生を捨てて見習い仙人になった智桂です。異国に嫁いだ妹の状況を心配する智桂と、一見怖いけれど実は心優しい将軍・希柳の二人が育む初々しいロマンスは、どこか甘酸っぱくてくすぐったい気持ちになります。さらに印象的なのは、大人しくて世間を知らない妹・琳花を外に連れ出し、嫁ぎ先の異国で居場所を作ってあげようと奮闘する智桂の、いじらしいほどの妹への愛! けれども智桂は仙人になった身の上、本当は人間界に関わってはいけないはず……。それなのに俗世から離れられない智桂の人間くささがたまりません。個人的には作中に登場する好敵手もお気に入りのキャラクターでした。当初は主人公側と対立するヒール的な立場にありながら、一本筋が通った言動をみせる凛とした格好よさに痺れます。

 会社の嫌味で男尊女卑な上司のように智桂に嫌がらせをする医官・吾尹粛を見事に遣り込める場面にもスカッとしました。思うように生きられなかった公主時代とは異なり、今の自由な立場を楽しむ智桂の姿は、まさに清々しいの一言。現実社会を生きる私たちもまた、いまだ根強く残るさまざまな社会の枷に、無意識のうちに縛られています。そんな息苦しさを、ひととき解放してくれる爽快さにあふれています。

文:嵯峨景子

ざっくり言うとこんな作品

1)マイペースで飄々としたヒロインが魅力的。真面目で勤勉だが、修行で失敗してたびたび爆発を起こす智桂の姿がなんとも愛らしい。

2)ヒロインとヒーローのロマンス、ヒロインと妹の互いを思い合う姿、師弟の信頼関係など、絶対に琴線に刺さる関係性を見つけられる!

3)作り込まれた中華風世界観に引き込まれる。白芳国や青嶺国という文化や風習の異なる国の描写や、仙界の設定が中華ファンタジー好きにはたまらない。

主要キャラ紹介

▼芳智桂(ほうちけい)
元白芳国の一公主。10年前に崖から転落して死にかけたところを仙人の鏐宗寿に見いだされ、人としての生を捨てて女仙になった。宗寿のもとで見習い仙人として錬丹術の修行に励む。

▼烈希柳(れつきりゅう)
青嶺国の若き将軍。炎龍と呼ばれて人々から恐れられている。大怪我をしたところを智桂の仙術に助けられ、彼女の正体を知ったうえで協力する。高潔な人物で料理が得意。

▼琳花(りんか)
白芳国の第二公主で智桂の異母妹。母親代わりだった姉の智桂を慕っていた。政略結婚で青嶺の王・嶺擂珀に嫁いだものの、一度も王とは会えないまま後宮で暮らしている。

▼鏐宗寿(りゅうそうじゅ)
長い時を生き、底知れない力をもつ仙人。智桂に仙としての資質を感じ昇仙させた。銀髪の長い髪と切れ長の瞳をもつ美形。未熟な弟子を見守りつつ、ときに協力する。

  • 中華・後宮
  • 嵯峨景子
  • 読書感想文レビュー

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    仙華繚乱 女仙、転じて医官となる
    「白芳国の華」と呼ばれた美しい公主は事故で死に、仙として生まれ変わった――。

    そして現在、元公主の智桂(ちけい)は日々調合に失敗しては爆発を起こし、師父に怒られつつも充実した毎日を送っていた。
    そんな折、人であった頃の妹姫が輿入れ先の隣国で冷遇されていると知る。

    様子を見に隣国に向かう智桂は偶然、男性二人が殺し合う場面に居合わせてしまう。
    そこで自分をかばって重傷を負った男を助けるも、彼は隣国の若き将軍で――「お前、何者だ」。

    飄々とした女仙と無骨な武人の出会いから始まる中華冒険恋愛活劇、開幕。
    秋良 知佐 (著者) / 七原しえ (イラスト)
    発売日: 2025/07/15
    富士見L文庫
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