【新作ラノベ先読み感想文レビュー】
今回はファンタジア文庫から7月18日に刊行された『クラスメイトの残念美少女、金を払ってでも俺と友達になりたい。』です。みなさんの感想も聞かせてください!
金銭を介した契約で他者と繋がるのは、虚しいことではないかと思っていました。けれど本作の主人公・朋夜とヒロイン・結夢の関係を見ていると、建前のある関係に救われる人はいるし、必ずしも冷たく乾いたものとは限らないのだと気づかされます。
過去の経験から、誰かと関係を築くことに臆病になっている二人。彼らを見てひしひしと感じたのは、他者との繋がりを強く求めている人ほど、それを壊すのが怖くて手を伸ばせないのだということです。
友人契約中の彼らの触れあいは、カップルにしか見えないような甘いもので、こちらまで思わず照れくさくなるほどでした。
しかしいずれ終わる関係と割り切って、心の予防線を張っているからこその大胆さだと考えれば、イチャつきぶりが凄いほど、なんとも言えない寂しさ、切なさが込み上げてきます。

私自身も経験がありますが、何かに焦がれる気持ちが強い時には、無意識に対象を美化しがちです。そうしているうちに自分の中の理想像が凝り固まって、不必要なまでにストイックになってしまう。それは「こんな凄いものに手が届くはずはない」と、自分を卑下することにも繋がり、他者の目には痛々しく映るかもしれません。
行動の上ではどれだけ親密にしていても、ことあるごとに契約を持ちだし、関係に線引きをしようとする朋夜と結夢には、ある種の潔癖ささえ強く感じました。そういうリアルな“人間らしさ”というか、踏み込みたいけど踏み込めないじれったい感じが、ラブコメとしての甘さと物語としての奥行きを与えてるんだと感じました。

傍から見ると、もどかしくも切ないやりとりを続ける二人ですが、それは他者との繋がりに対してどこまでも真摯な証だと思います。悩んで迷ってそれでも深まる絆というのは、痛みのぶんだけ強くなるに違いありません。人との関わりは傷つくことも多いけれど、それを恐れるのはもったいないと思わせてくれる作品です。

テキスト:明日香 譲
ざっくり言うとこんな作品
1)アルバイトで半引きこもりの美少女・結夢に依頼されたのは、彼女の叔母が尋ねてくる日まで友達のフリをすること。果たして朋夜は仕事をやり遂げることができるのか?
2)朋夜が結夢から指示されるスキンシップは、何故か恋人のような距離感のものばかり。さらにはかなり刺激的なハプニングまで!無自覚なイチャイチャにニヤニヤが止まらない!
3)期間限定の契約として始まった友人関係は、時間が経つほどお互いにとってかけがえのないものに。素直になれない二人が、戸惑いながら絆を深めていく姿が切なさも相まって尊すぎる!
主要キャラ紹介
潜木朋夜(くぐるき・ともや)
何でも屋のアルバイトに勤しむ高校一年生。両親の離婚をきっかけに一人暮らしを始め、人間関係に関して冷めている部分がある。仕事なら無茶ぶりにもきちんと対応する。

出羽結夢(いずは・ゆめ)
両親の事故死がきっかけで半引きこもりになった少女。失うのを恐れ人付き合いを避けていたが、朋夜に友達になるよう依頼する。ゲーム好きで、彼をからかったりすることも。

夕原詩音(ゆうばる・しおん)
朋夜の同級生でクラス委員。トップレベルの成績で人当たりが良く、容姿も整っているので人気が高い。クラスに馴染もうとしない朋夜に頻繁に声を掛ける数少ない人物。

- ラブコメ
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関連書籍
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クラスメイトの残念美少女、金を払ってでも俺と友達になりたい。こいつの『友達』距離感……バグりすぎ!?
☆☆☆☆☆
――わたしと友達になってくれますか?
不登校中の美少女同級生・出羽結夢からされたお願いを断れなかったのは、金を積まれたせい。
そして結夢の友人(期間限定)となった俺は、彼女の家へ通い毎日を一緒に過ごすことに。
でも、ずっとぼっちだった結夢は金を払ってる安心感から、異常に距離が近くて!?
「もっと、強く抱きしめてよ。……いいでしょ?」
膝枕、バックハグ、愛してるゲーム。
友達の範疇を超えてるだろという甘々展開の中、俺たちは互いの心を通わせていく。
これは「契約」から始まり「本物」へ至る、友情ラブコメ!発売日: 2025/07/18ファンタジア文庫