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ハードな前世から転生したのは辺境貴族の三男坊。自分の“在り方”と向き合い、まっすぐに進んでいく――。硬派な正統派転生ファンタジー

ファミ通文庫
ファミ通文庫
2025/07/30

【新作先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫から7月30日に刊行される『騎士爵家 三男の本懐』です。みなさんの感想も聞かせてください!


 最初から最期まで、壮絶なハードモードのまま人生終了。それを神に「人生を無為に過ごした」と解釈され、罰として前世とまるで異なる、身分がすべての世界に転生させられて……。なんだか、死んだあともハードモードが続いている気もしますが、少なくとも彼にとっては、神の与えた罰は、罰にはならなかったようです。

 前世はいわば、どん底の人生。ならば、たとえ異世界に転生しようとも、あとは這い上がるだけ。幸い、新たな人生では家族や才覚にも恵まれ、この世界では肝心の身分もそれなり。そんな環境で、家族や辺境の民草を護るため、なにかを成すことを目指すとは。恵まれない前世からの異世界転生なら、ひたすら自由を謳歌してもいいはずなのに……。自分なら間違いなく後者を選ぶと思うだけに、彼の選択には心を動かされました。

 身分やら慣習やらスキルやら、なにかとしがらみの多い異世界で、「大それた信念は無い」と言いつも、まっすぐに進んでいく彼の姿は、なにも成せなかった前世の後悔を払拭しようとしているかのようで、力強く、そしてまぶしく感じます。同時に、どんな状況でも自分の心に従い行動しているようで、実は彼、かなりこの異世界を楽しんでいるのかも。人との出会いや揺るがない意志で困難を乗り越えていく彼の生き様を追っていると、やはり、どん底を知る者は強い、ということを思わされました。さすがに彼の前世のようなハードな人生を味わうのは勘弁ですが……、その強さは見習いたいですね。罰として生まれ落ちた異世界で、はたして彼がなにを成すのか。結末がとても楽しみな作品です。

文・瀧田伸也

ざっくり言うとこんな作品


1)毒親に育てられ、生きる目的さえ見失った男は、ただただ年を重ね、誰にも看取られず亡くなった。そんな彼に、神が語りかける――。

2)『無為に生きた罰』として、別の世界に転生した主人公。そこは、身分制度がすべてを決するような、自由のない世界だった。

3)辺境貴族の三男として生まれた主人公は、家族の愛情を受けて育ち、望外の魔力とスキルを活かして、家族と民草を護る使命を自覚していく。

主要キャラ紹介

騎士爵家の三男(私) 
前世の記憶を持ち生まれた騎士爵家の末子。成長するなかで辺境貴族の使命に目覚める。

  • ファンタジー
  • 瀧田伸也
  • 異世界
  • 読書感想文レビュー

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    • ファンタジー
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