【新作先読み感想文レビュー】
今回はファミ通文庫から7月30日に刊行される『騎士爵家 三男の本懐』です。みなさんの感想も聞かせてください!
最初から最期まで、壮絶なハードモードのまま人生終了。それを神に「人生を無為に過ごした」と解釈され、罰として前世とまるで異なる、身分がすべての世界に転生させられて……。なんだか、死んだあともハードモードが続いている気もしますが、少なくとも彼にとっては、神の与えた罰は、罰にはならなかったようです。
前世はいわば、どん底の人生。ならば、たとえ異世界に転生しようとも、あとは這い上がるだけ。幸い、新たな人生では家族や才覚にも恵まれ、この世界では肝心の身分もそれなり。そんな環境で、家族や辺境の民草を護るため、なにかを成すことを目指すとは。恵まれない前世からの異世界転生なら、ひたすら自由を謳歌してもいいはずなのに……。自分なら間違いなく後者を選ぶと思うだけに、彼の選択には心を動かされました。
身分やら慣習やらスキルやら、なにかとしがらみの多い異世界で、「大それた信念は無い」と言いつも、まっすぐに進んでいく彼の姿は、なにも成せなかった前世の後悔を払拭しようとしているかのようで、力強く、そしてまぶしく感じます。同時に、どんな状況でも自分の心に従い行動しているようで、実は彼、かなりこの異世界を楽しんでいるのかも。人との出会いや揺るがない意志で困難を乗り越えていく彼の生き様を追っていると、やはり、どん底を知る者は強い、ということを思わされました。さすがに彼の前世のようなハードな人生を味わうのは勘弁ですが……、その強さは見習いたいですね。罰として生まれ落ちた異世界で、はたして彼がなにを成すのか。結末がとても楽しみな作品です。
文・瀧田伸也
ざっくり言うとこんな作品
1)毒親に育てられ、生きる目的さえ見失った男は、ただただ年を重ね、誰にも看取られず亡くなった。そんな彼に、神が語りかける――。
2)『無為に生きた罰』として、別の世界に転生した主人公。そこは、身分制度がすべてを決するような、自由のない世界だった。
3)辺境貴族の三男として生まれた主人公は、家族の愛情を受けて育ち、望外の魔力とスキルを活かして、家族と民草を護る使命を自覚していく。
主要キャラ紹介
騎士爵家の三男(私)
前世の記憶を持ち生まれた騎士爵家の末子。成長するなかで辺境貴族の使命に目覚める。

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騎士爵家 三男の本懐この国の騎士爵家の三男とは、家の為に献身を求められ、やがて民の為に死ぬ運命にある存在だ。
私には前世の記憶と、幸いなことに持って生まれた『ギフト』があった。
その恩恵のおかげで私は王都の魔法学院に入学することができた。
華やかな貴族社会で羽目を外す婚約者を尻目に、私はただひたすら学院の環境を活かして、家族のために己の研鑽を積む。なぜなら、彼らは前世で経験したことのない愛情を私に与えてくれたからだ。
民草を護り、王国の安寧に寄与すると壮大で殊勝で矜持に満ちた父や兄達とは違い、私にはそのような大それた信念は無い。ただ、私を愛してくれた者達が安寧に暮らしていける手段を求め続けているだけだ。
だから、買い被りはよしてくれ。
私は、辺境の子であり、騎士爵家の三男であり……自分の名前すらわからない「名もなき」存在なのだから。発売日: 2025/07/30その他単行本